[2004] Until the Night

日本語タイトル

なし

役名

Daniel

だめになったぼくを見て、君もびっくりしただろう

UNTIL THE NIGHT

Amazon.comのレビューで日本的とか日本の視点と書いている人が何人かいたので、なんでだと思ったら、監督がGregory Hatanakaという日系の方で、カメラやエディターなど日本人の方々が多数参加しているようで。だからそんな感性に見えるようです。なのに日本で話題にならないで、私も北米版DVDを輸入することになるってのもおかしな話です。

さて観た感想ですが日本的ってどこ?結論をはっきり言わないところとか、カメラワークが次々切り替わってエピソードがぶつ切りのところとかがそう見えるんでしょうか?お洒落イメージビデオっぽい感じの撮り方とか?日本の歌謡曲流してたとこ?和楽器みたいなBGM?カフェやバーなどのモブに日本人(アジア人)のエキストラが何人もいたところ?日本語台詞?UCCの空き缶?

――なんて。小道具などでは日本的なものが割とありましたが、生活シーンとか、床の上でもカツカツ靴で歩いちゃうとか、キャラの言動はアメリカっぽいなって(当たり前)思いました。

  
さて日本でこの映画を見た人の98%はNorman Reedusのファンの方でしょうが、私の目当てはMichael T. Weiss。今回はダメ男Daniel役です。始まって三十秒足らずから出てきてくれるのは嬉しいけど、落ちぶれた役者で、ほとんどヒモで昼間からタバコ吸って家で飲んでる男。無精髭にTシャツにジャージでウロウロしてます。この物語中、一度も家の外に出てません。そして相変わらずいろいろ濃いです。でも私の目には世界一ハンサムな男に見えてます。笑。

 
奥さんはちゃんと働いてキャリアを積みながらも、そんな彼を甲斐甲斐しく世話してます。ある時は奥さんが仕事から帰ったら、飲んで食べたテーブル散らかし放題で夫は寝てるし、また別の時は部屋中キャンドルだらけ、トイレはゲ○吐いてそのままで床は汚れ、夫は酔ってはしゃいでるとか、まあひどい話です。(このシーンでたぶん日本の歌謡曲流してて、女性歌手の声で「いくたび離れても何故だか二人には」「自分で明日へ」みたいな日本語歌詞が聞こえた気がしますが、誰の曲か分かりません。昭和のアイドル?アニメか何かの曲?とにかく痛々しさを増す効果抜群の曲のチョイスです…。)

それでも奥さんはそんな生活を維持しようとしているところで、Norman Reedus演じる元彼Robertに会ってしまい、そっちに惹かれる――という流れ。主人公はこちらのRobertの方ですが、彼も自分の妻のビデオ撮って酒飲んでタバコ吸ってラリッてエスコート嬢にはまってみたり、やはりロクでもない男。『The Walking Dead(ウォーキング・デッド)』だとクロスボウ持ってカッコいいのに、こっちで持ってるのは酒瓶かグラスかタバコ。映画とはいえ、見てる側が引くほど酒飲みまくってます。

今の夫に愛想尽かして昔の彼がカッコよく見えて乗り換えても、結局、どちら選んでも同じ結末になるんじゃないかって感じ。日本風に言ったらだめんずってやつですこの奥さん。

でも悲惨に見えないのは奥さん役のKathleen Robertsonの演技が可愛いから。彼女、ストロー持ったりクリーム塗ったり普通の動作をしていても、仕草がとっても女の子らしい。今回の役は髪もブロンドじゃないし、眼鏡かけててちょっと地味目ですが、華やかな美人ではなくて会いに行けそうな距離感の可愛いタイプって感じ?ファッションも可愛い系のコンサバです。アメリカ女性はセクシー命らしいので、こういう部分は日本的かなと思ってみたり。でもモテモテでやることやってます。

「奴も終わりだな」「オーマイガー」「貴様、死にたいのか」「やってみろ」???←劇中劇の日本語台詞

というわけで、そんな大きなエピソードがあるような映画ではなくて、ひたすらケンカして酒飲んでタバコ吸ってる廃人ばかり出てくるような、それでもどこかにありそうなカップルたちの物語なのですが、正直リアルなダメ男役って地味にきついです。まだバーナー片手に女を乱暴してる『Iowa』の役とか、ジャンキー『Freeway』の役のがマシっていうか。だってそれって『演技』って『物語の役』って分かりやすいから。

この映画のDanielが酔いながらテレビで見てる自分の過去の役、サングラスに黒髪短髪のJarodっぽいカッコいい正義のヒーローなんですもん。女を人質に取ってる悪党を振り向きざまに撃って仕留めてます(この時、本人の声じゃないけど日本語で「貴様、死にたいのか」って言って「やってみろ」って返されて撃ってます。どんなドラマなんだよこれ…)。かつて人気ドラマの主人公を演じていたけれど、今や見る影もなく自堕落な…って、生々しいっての。どうせ彼は『The Pretender(ザ・プリテンダー 仮面の逃亡者)』の一発屋だよって突っ込めと?その後はパッとしないって?役者の現状を知ってるこっちの心のが痛いよ!←自虐ネタ。しかもこのドラマ、テレ東でやってたのに日本では人気出なかったし…。けど数年ぶりに本人コスプレで、それっぽいヒーロー姿が見られて嬉しかったのも事実…。

 
I feel like I’m losing it.

Danielは過去の栄光はもう過去のもので、現在の自分は駄目なことを理解しています。でもどうしようもなくて酒に逃げてます。そして帰ってきた奥さんに結婚失敗したと思ってるだろ、これ以上一緒にいたくないだろって聞いてたり。奥さんの気を惹こうとして部屋の模様替えに夢中になってたら、奥さんの仕事のパーティーの約束忘れてたり。奥さんが元彼Robertからの電話取ってるのをこっそり聞いてたりとか、問い詰めてケンカになって言い返されてたりとか。どこを取ってももういいよって言いたくなるような空回りしてて落ちぶれた男です。まあこれもドラマですよ勿論。

それを見ながら私は、よくよく考えたら悪役も含めて彼は『強い男』の役が多かったけど、そういうアメリカンヒーローな役って、舞台もどこか現実離れしてるし作り物感満載で、それをフィクションとしてこっちも楽しんでいるわけで、リアルとの接点がないところが夢の世界的で楽しかったんだなとこれまでの役を振り返ってみたりしました。何故か過去形。

一方でこういう日常系のドラマで生々しい感じの役って、これも虚構ではありますが、リアルの延長線上にありそうな感じを狙ってくるわけで、スクリーンの向こうと現実との距離が小さい(ように見える)。しかも今回の役は、ダメ人間で弱い男。

その差を見て、私自身がMichael T. Weissに求めていたのも、隙のない強くて完璧でカッコいいアメリカンヒーローだったと気づいたというか。弱い姿は見たくなかったっていうか、見る覚悟がなかったのに気付いたというか。映画を観つつ、自分の心を見つめ直すきっかけを与えられたというか。←大げさです。

まあいろいろ書いてますが要するに「彼になんて役させんのよー!」と。演技と分かっていても痛々しくて見てられない。でも捨てられてる犬みたいな目つきしてるの見ちゃうと、可哀想で胸キュン(死語)しちゃう。。。ハイ、私はいつもアホです。
    
と、ここで気が付きましたが、こういう弱い男に母性本能刺激されちゃうみたいな、ダメ男を守ってあげたくなるような感覚が日本的なのかも?!勿論アメリカにもダメ男の物語はたくさんありますが、なんて言うかこれは『ぼくたちの失敗』って感じ?――ってどういう感じだよ?

ボーナストラックの没シーンで、掃除してゴミ出ししてるDanielの姿が見られます。何故かまた上脱いでるし、Robertに覗き見されてるし。黒いゴミ袋抱えててもカッコいいね!これからは主夫の役でもどんと来いだわ。というわけで、現代ドラマだから油断していたら、いろんな意味でファンの心を試す映画でした。

そしてNorman Reedusの出てるシーンはまだまともなのに(彼は日本語分かるから?)、Michael T. Weissのほうは謎日本語満載でしたが、こっちは役者当人が日本語分からないのをいいことに悪乗りしてる気もしつつ、笑、シリアスな演技とのギャップは、日本語分かる人にしか楽しめないかもしれないと思うとちょっと得した気分でした(?)

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